酒席で盛り上がった親どうしが勝手に決めた二人の奇妙に穏やかな結婚生活。というモチーフは、現在進行中の最新作:
とほとんど同じだし、生まれつきぽーっとした女子が主人公である点も共通だが、『この世界〜』では夫がしっかりした人物なのに対し、『長い道』では金欠の女好きという点がちがっていて、その分、描かれる結婚生活の奇妙な存在感がより強い。それは、日常性と呼ぶにはいくらなんでも妄想めいていて(かれらはガスや水道が止められてもいがみあいもせず、いつも「いやーまいったまいった(笑)」という顔で暮らしつづけるのだ)、しかし絵柄のかわいらしさに引っぱられるようにして繰り返し読むうちに、なぜかそのほうが本当のリアリティであるように思わされてしまうのだ。 この人はあなどれない。あの超名作『夕凪の街 桜の国』(何度読んでも、途中から滂沱の涙でページが見えない)を生み出した確信のずぶとい厚みを見透かすことは、まだできない。しばらくは、『この世界の片隅に』の展開を、大いなる哀しみの予感に打ち震えながら、見守ることにしよう。
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